アイドル現場はコロナ禍で声出しをすることも難しくなった時期があり、それを機にカメラで推しメンのライブ写真を撮影してSNSに掲載して応援しようと、ミラーレス一眼カメラを持ったアイドルオタクの方も多いと思います。
この記事は、ミラーレス一眼のカメラの設定をマニュアルでしっかり行い、脱初心者をして一歩先へ踏み出したいというカメコのアイドルオタクに向けて、アイドルライブ撮影(静止画)におけるカメラの設定を解説していくシリーズです。
今回はISO感度編です。適正なISO感度の設定を身に着けることで、アイドルライブ撮影の写真(特にライブハウスでの撮影)で自分のイメージに合う写真を、暗所でもノイズが一番少なくなる設定で撮影することができるようになります。
普段はオートでカメラ任せにしている方も多いと思いますが、ライブ撮影をする際は、実際どのようにすればより良いのか、3年以上地下アイドルを撮り続けた経験をもとに解説していきます。
アイドルライブ撮影をマニュアルで設定する理由と基礎知識
ISO感度について詳しく説明する前に全体像を把握していただくため、アイドルライブ撮影をマニュアル設定で撮影する理由と、マニュアル撮影で常に念頭においておくべき基礎知識を説明します。
アイドルライブ撮影をなぜオートではなくマニュアル設定を推奨するのか
カメラには絞り優先オート・シャッタースピード優先オート・全オートなど、様々な設定があり、高いカメラならこの機能でばっちり撮れるのではと思う方もいらっしゃるかと思います。
しかし、アイドルライブ撮影(特にライブハウス)では、暗い場所で光の強弱も常に変化し、さらには被写体であるアイドルがダンスで激しく動くため、明るさに関する設定がとてもシビアになります。
また、ライブハウスでアイドルライブ撮影を行う場合、レンズを通して見た世界が、局所的に明るい部分と暗い部分が発生する状況が多々あります。
その場合、カメラ側はどこに明るさを合わせればよいか適切な判断を下せないことがあり、暗かったり、必要時以上に明るくしすぎて適正な設定では出るはずがなかったノイズが発生することもあります。
その為、適正な設定を撮影者の手でマニュアル設定で決めることが失敗をしないコツになります。
アイドルライブ撮影でカメラが「明るさ」を決める大切な3要素
カメラで撮る写真は、次の3つ要素によって明るさが決定されます。
これらの3つの要素が組み合わさって明るさを決定しています。
この要素をすべてマニュアルで設定をすることで、明るさ的にシビアな環境での撮影でも、カメラのポテンシャルの一番いい部分を引き出すことができます。
また、自ら設定することを繰り返すことで、カメラを通した撮影時の光の感覚が身につきます。
その為、カメラを通さずとも、「この環境なら今の手持ちの装備であの設定をすればこれくらいで撮れそう」といったイメージを感覚的に持つことも可能になります。
アイドルライブ撮影(ライブハウス)で3要素を決定する順番
私がライブハウスで撮影をする際は、先ほど紹介した【明るさを決める3つの要素】の番号が早い順
に設定の数値を固定していき、明るさを決定させていきます。
それぞれに数値を上げたとき・下げたときでメリットデメリットが異なる為、今回はISO感度に限定して説明をしていきます。
アイドルライブ撮影でISO感度が与える影響
アイドルライブ撮影をライブハウスで行うにあたって、ISO感度の設定は大きくわけると2つのことに影響を与えていきます。
ISO感度が与える影響①:明るさの調整
この項目ではISO感度が影響するもののうち、明るさについて解説していきます。
ISO感度を上げれば明るい写真になり、下げれば暗い写真になる
ISO感度とは、ざっくりいうとレンズを通して入ってきた光を、どれくらい増幅させるかという指標になります。
ISO感度を上げれば上げるほど、光を増幅させていくので明るい写真を撮れるようになります。
キレイな写真を撮るにあたり、他の2つの設定と異なり、ISO感度は明るさ以外に変更した時のメリットが特にありません。
シャッタースピードは変更によって「明るさ」と「ブレ感」を調節できます。
絞り(F値)は変更によって「明るさ」と「ボケ感」を調整できます。
その為、どのように撮りたいかを先の2つの設定で決定し、最後の明るさの調整ということで、ISO感度を設定していくことになります。
ちなみにデジタルカメラはボタンでISO感度を自在に変更できますが、フィルム時代はこのISOがフィルムに依存していましたので、フィルム1本分撮影を終えるまでは、ずっとその感度を使用する必要がありました。
明るさの調整をオートにしてはいけない理由
ISO感度は初期設定ではオートになっていることがほとんどだと思います。
このオート機能は、カメラは画面内の光の量などを分析し、カメラが最適と思う明るさにISO感度を調整してくれます。
しかし、「カメラが最適と思う明るさ」=「実際に最適な明るさ」になるとは限らないのです。
例えば、撮ろうとする枠内に、照明の灯体がある場合と無い場合ではカメラはどのように感じるでしょうか。
灯体がる場合は、極端に明るい場所を白飛びしないように抑えるために、全体的に暗くなるように設定にする傾向が出るでしょう。
灯体がない場合は、全体的に明るくなるように設定する傾向が出るでしょう。
カメラがどのように光を計算してくれるかは、「測光モード」を変更することで、ある程度の傾向を決めることが可能です。
しかし、絶えず環境が変化するアイドルライブ撮影では、測光モードが思い通りに働くことができないカットの場目も少なくありません。
写真で大切にしなければならない明るさをカメラ任せにすることは、アイドルライブ撮影の環境では私はリスキーに感じています。
ISO感度を上げすぎると明るさの面でもデメリットが発生する場合がある
ISO感度を上げすぎるとノイズが発生するというデメリットがあります(次の項目で詳細を説明します)が、それ以外にもデメリットが発生します。
それは、明るい部分の白飛びです。
「白飛び」は明るすぎてカメラがそこの場所の色を捉えることができずに真っ白になってしまうことです。
現在のミラーレス一眼カメラは写真をパソコンに取り込んで現像をすることで、明るすぎる場所を暗めにしたり、暗めなところを明るくすることもできます。
その時に白飛びの場所があると、白飛びしたところは情報が無くなってしまっているため、現像で明るさの調整をした場合でも、自然な感じで暗めにすることが難しい場合があります(俗にいう、諧調が失われている状態です)。
白飛びがすべて悪いというわけではありませんが、顔などに白飛びの場所が発生してしまうと、かなり調整が難しくなってしまうというのが私の体感によるものです。
ノイズ発生のリスクまで犯して明るくしたのに気づいたら白飛びで残念なことになっていた…とならないように、どこまでISO感度を上げていくかは明るさの面でも注意が必要になります。
ISO感度が与える影響②:ISO感度を上げるとノイズが増加する
ISO感度が与えるノイズとはどういうものなのか。
また、ノイズを抑えるためにはシャッタースピードと絞り(F値)で設定する以外の方法はあるのかということについてご紹介します。
ノイズについて
明るさの調整の項目で、ISO感度を上げれば上げるほど、光を増幅させていくとお伝えしました。
光を増幅させるということには当然デメリットも付随してきます。
それは、ISO感度を上げれば上げるほど写真にノイズ(ざらつき)が発生してしまうということです。
これは、光を電気的に増幅させるため、発生してしまう現象になります。
そして増幅の幅が大きければ大きいほど、つまりISO感度を上げれば上げるほど、ノイズの影響は写真に大きく表れてきます。
ノイズを抑えるためにはセンサーサイズが大きいカメラが有利
カメラのイメージセンサーサイズは、レンズ交換型のカメラでポピュラーなものを上げると、大きい順に、以下の通りになります。
- フルサイズ
- APS-C
- マイクロフォーサーズ
その中で暗めの環境でもノイズを抑えるためにお勧めなのはフルサイズセンサーを搭載するカメラになります。
センサーサイズが大きければ大きいほど多くの光を取り込むことができるため、暗所耐性が上昇します。
撮影する対象によってはマイクロフォーサーズのセンサーサイズのカメラでも十分きれいな写真は撮影することができます。
そういったカメラは軽量ですし、旅行などにはとてもお勧めです。
しかし、アイドルライブ撮影という常に暗い環境である特殊な環境下でも耐えることができるのは、フルサイズ機のカメラになります。
ISO感度の設定方法
ライブハウス内での撮影では冒頭でお話した通り、シャッタースピード→絞り(F値)→ISO感度というふうに最後に設定をする項目になります。
ここからは、ISOを最後にどのように調整していくかというところにフォーカスを当てて、設定方法をご紹介していきます。
ISO感度を設定するためにはステージ上の光を読むことが大切!
項目を見て「ステージ上の光を読むとはいったいどういうことなんだ?」と感じたのではないかと思います。
ズバリ言うと、ステージのそれぞれの位置で、どのくらい光がアイドルに当たるか把握していくということです。
設定をするにあたって、この感覚が非常に大切になってきます。
なぜ位置による光の当たり方の把握が必要かというと、ライブハウスでは立ち位置によって光の当たり方にムラが出てくる場合があるからです。
ホールなど、多用途なステージの場合は証明をステージ全体に均一に当てるような設備もあります。
しかし、ライブハウスの場合は音楽ステージを演出するための光がメインで設置されています。
そのため、演者を照らす前からの光はあるにしても、ステージ後方や左右の端まで均一に光を当ててくれる設備はない(サイドスポットなど、横からの照明などはありますが、面で均一にという意味になります)ことも多く、その結果、ステージ上の光の当たり方にムラが出てきます。
ISO感度を設定する基準になる場所(撮影を狙う立ち位置)を決めよう
自分自身が思った通りのガチガチの設定で撮影することで撮影することがベストだと思っているので、ISO感度もマニュアル設定を推奨しています。
先ほどの説明で「光にムラが出る場合は設定はどうしたらいいのか?」とあなたは感じていませんか?
ここで、私のとっておきの調整方法をご紹介します。
私はシャッタースピード→絞り(F値)を設定した後に、ある位置に立っているアイドルを使って最終的なISO感度の基準を設定します。
それは、ステージのセンターで照明を浴びて立っているアイドルです。
なぜかというと、ステージのセンターは一番の見どころがある場所であり、この位置はほぼ確実に一番明るくなるようにステージが設計されているからです。
光を合わせる基準を決めたときのISO感度の設定方法は?
基準になる場所を決めましたが、その時にどのように設定するかご紹介します。
設定方法は、ズバリ、「基準の位置のアイドルの顔や衣装が適正な明るさなるように合わせる」です。
ライブハウス内は基本的に暗く、カメラで見たときに一番明るいところはどこかというと、照明を直接撮る(枠内に入っている)という状況を除くと、前から当たってくるメインの光を受けてステージに立つアイドル自身だからです。
一番明るい場所であり、かつメインの被写体ですので、ここで最適な明るさをとることができるように設定していきます。
どのように設定していくかというと、ISO感度を変化させながら、被写体がある程度明るく見えて、諧調が必要なところに白飛びする箇所が無いようなISO感度を探して固定させるという方法です。
白飛びしているかどうか撮影時にファインダーや画面でわからない場合は、以下の方法で確認します。
・一度テストで写真を撮影する
・プレビュー画面で先ほど撮影した写真を表示させる
・白飛びを表示できる表示方法に変更し、白飛びしているか確認する。
また、ISO感度はフルサイズ機でも1000台くらいに収めたいというところが本音です。
状況的によっぽど暗くて仕方ない場合は、α7Ⅲを使用している私は3200くらいまで上げることもありますが、高感度性能が高めのボディでも、ここまですることノイズがかなり気になってくる印象です。
暗い位置のアイドルを撮る場合は撮影中にISO感度をこまめに調整しよう
明るい場所を基準に設定しましたが、曲によって、撮りたい推しメンが照明の弱い場所にしばらくとどまることもあると思います。
その際は照明がよく当たる他のアイドルを撮影するのも一つの手ですが、やはり暗い場所でも推しメンを撮影したいという方も多いと思います。
その場合は、撮影したい場所に合わせて、センターポジションで設定したものよりも少し明るくなるような設定に変更することでそのまま撮影が可能です。
シャッタースピードを遅くすることも明るくさせる一つの手ですが、シャッタースピードを妥協したくないときは、ISOを少し上げてみることで、撮りたい明るさにすることも可能です。
ISO感度設定調整の観点からもコンパクト機ではないフルサイズ機がお勧め
暗所耐性はセンサーサイズが大きい方が有利なのでフルサイズ機をお勧めしますと先ほどご紹介しました。
暗所耐性だけではなく、調整のしやすさという観点からもフルサイズ機をお勧めします。
特に、フルサイズ機のなかでも、コンパクトとして銘打たれたもの(α7Cなど)ではなく、一般的なサイズのカメラを調整の観点からはお勧めします。
コンパクトではないフルサイズ機をお勧めする理由としては、カスタムで機能を持たせられるボタンやダイヤルが多く、設定方法の幅が広がることで、自分が一番撮影しやすい設定を見つけることができるからです。
ISO感度を変更するときは一瞬で動かして次の場面に備える必要があります。
その為、設定の機動力が非常に重要になってきます。
私の場合は、画面横にあるダイヤルにISO感度の設定を割り当てて、機動的に変更ができるようにしています。
他にも様々なカスタム方法があるので、あなたに合ったカスタムを探していきましょう。
アイドルライブ撮影:ISO感度編のまとめ
今回は地下アイドルライブ撮影(静止画)をする際のISO感度の決め方について解説していきました。
大切な項目をまとめると以下の通りです。
・ISO感度を上げすぎるとノイズが増加してノイズが目立つようになる
・ISO感度はアイドルが白飛びしないかどうかも含めて決める
・ISO感度までマニュアルで設定することで、環境が頻繁に変わる状況でも明るさを自分の手で支配できる
・ステージ上の明るさを立ち位置別に把握して、ベストの設定で撮影する。
・センサーサイズがフルサイズのボディが暗所対策には有効
ISO感度を適正に設定して、より良いライブ写真を撮影していきましょう!
また、地下アイドルライブ撮影で疑問やがあれば、こちらからご質問ください。
ご意見ご感想もお待ちしています。